-24mルール

パパラギのダイビングツアーでは、特別な理由のない限り水深24m以深へお連れする事はありません。たとえあなたが適切なトレーニングを受けたアドバンスド・オープンウォーター・ダイバーであっても。

深淵の世界

しんと静かな濃紺の世界。浅場があんなにも賑やかだったのがよくわかるほど。水深30mを超えても日の光はまだまだ届きます。届くと言っても明るさを感じるだけで景色は全て青に染まっています。
薄暗い部屋のように静かで寂しい世界なのかと思いきや、ライトで照らすと目を疑います。
色とりどりのソフトコーラルの森をあちこち動き回る生物は驚くほどたくさん。その色彩の多さは、まるで違う惑星に迷い込んだと感じるほど。
そしてその景色はさらにその深みへと広がっているのです…。

私たちのホームグラウンドである伊豆半島は、東西を相模湾と駿河湾に挟まれており、世界的に珍しい「深海が近い」海です。ビーチエントリーでも比較的ディープダイビングがしやすく、ダイビングのコースバリエーションに富んだポイントが多いのが特徴です。
浅場から深場へと環境が連続しているので、観察できる生物も多種多様。
なかなかお目にかかれない「レアもの」を求めて、一目散に深場を目指すダイバーも多く、いわゆる「ダイビングスキル」というのも、そのためのテクニックと捉えられている事も。

-24mルール

せっかく伊豆の海ならではの美しい世界が広がっているというのに、なぜパパラギでは24mまでの深度制限を設けるのでしょうか?
海を楽しむ権利を制限してまで優先されるもの、それは「安全」に他なりません。

水中に潜っている以上、最後は浮上をして水中から出なければなりません。熟練のダイバーなら、水深30mから浮上を開始し安全停止を経て何事もなくダイビングを終えられる事でしょう。
では、何かトラブルがあったときは?

トラブルが起きないようにする事が私たちの仕事です。
ですが、「トラブルは起きるもの」と考えているか「トラブルは起きないもの」と考えているかで、万が一起きてしまった時の結果は大きく違ってくるのです。
減圧障害や骨壊死などは、30mを超える潜水をしたときに大きくリスクが上がると考えられています。また、水中を長く移動することで肺水腫を起こす可能性も考えられます。ただでさえ呼吸を制限される水中で、肺の機能まで奪われるなんて考えたくありません。

これは個人差や体調面など様々な要素が複合的に絡むので、ダイブプロフィールによる安全の線引きが難しく、より慎重になる必要があります。
「私は何も起こらなかったけど、あなたは症状が出てしまったの?運が悪かったね。」
これはパパラギの目指す安全とは程遠いものなのです。

パパラギが見せる海

深い海ならではの楽しみがあるのは間違いありませんが、海の面白さは深く行けば行くほど増す訳ではありません。
ベテランほど遠くまで泳ぎ、深い海へ潜っていると思っている方も多いのではないでしょうか?
遠く足を伸ばさなくても、海の中には美しくて面白いものがたくさんあります。
遠く、深い海へ潜るスキルも必要なことではあります。それ以上に大切なのは、すぐそこにある海でも面白がれること。
パパラギのインストラクターは、水に顔をつけてすぐ海の面白さが広がっていることを知っています。遠く、深い海へお連れするインストラクションよりも、浅場の海でも満足していただける知識やインストラクションを磨いています。

ダイビングの余韻

パパラギのインストラクターは、海の中だけ楽しければ良いとは考えていません。ダイビングにお越しいただいた1日丸ごと楽しく安全である責任があると考えています。
ダイビングを終えて、笑顔で家に着ついた後までインストラクターは頭の中でシミュレーションしています。
その日見た水中の景色をご家族に話したり、上手に撮れた水中写真をゆっくり眺めたり。ダイビング後の穏やかな余韻まで味わっていただきたい。
リスクが上がる30m以深にお連れして、もしもご自宅に帰ってから体調に変化があったらもうどうしようもありません。
そこまで考えると、深場を攻略するテクニックよりも浅場を楽しむテクニックの方が優先すべきと考えます。

初めて海に顔をつけたあの瞬間を思い出せば、ダイビングの面白さに深度は関係ないのではないでしょうか。
あの「レアもの」はあなたの身を削ってまで見に行く価値のあるものでしょうか?あなたが一目散に通り過ぎた海には、あなたの知らない面白さが転がっているかも知れません。

水深4mで「何か」に夢中になるパパラギのスタッフ

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